セゲド大学の予備コースでの成績を利用してハンガリー政府奨学金を取得し、現奨学生の私らーゆが実際どんなものなのか?取るのは大変なのか?経験に基づいてご紹介します。
ハンガリー政府奨学金とは
ハンガリー政府奨学金とは、ハンガリー政府から留学生に給付される返済不要の奨学金です。正式名称は「Stipendium Hungaricum Scholarship Programme」
ハンガリーの留学生の数を増やし、ハンガリーの高等教育機関が優秀な外国人学生を集められることを目的として、2013年に設立されました。
ハンガリー政府が給付しているものなので、もちろん医学部に限らず、他学部でも受給可能です。
奨学金をもらえたら…?
- 卒業までの授業料が無料に
- 月々40,000Ft 程度の生活費補助(2024年4月現在15,000円ほど)
- 月々40,000Ft 程度の家賃補助(or 入寮無料)
- 年間60,000Ftまでの医療保険
政府奨学金って凄くないですか…!?申し込んだときはちゃんと見てなかったのですが、申請に合格した時に内容に驚きました…
留学生にこんなにお金かけていいの?!
日本で同じ制度をやろうとしたら「自国の学生は?」って炎上しそうじゃない?!と思って調べたら、
ちゃんとありました日本にも同じような留学生向けの制度。
そういうものなんですかね…?日本の奨学金を取れる留学生は超ハイレベルなのでしょうが…汗
でも私たちの学費と生活補助がハンガリーの方々の税金で賄われていると思うと、ハンガリーに恩返しできるような人間にならなきゃなと身が引き締まります。
ちなみに、医学部の単位取得に必須な実習に関してですが、こちらの費用もおそらく在籍している大学で実習する際は免除となるようです。
これはどこかに明示されているわけではないのですが、「1年生の看護研修をセゲドで受ける人は500EURの支払いが必要ですが、奨学金保持者は免除になる」と看護研修のお知らせメールに記載されていて、実際に奨学金から支払われたとの案内がありました。
今後の学年での実習も同じかどうかは分かりませんが、ひとまず2024年の看護研修では免除となっていました。
毎年申請がいる?
授業料の免除に関して、ハンガリー政府奨学金について誤解が多いのが、
「毎年、申請して合格しなきゃ貰えないの?」
ってことなのですが、一度奨学生になったらその学位を終了するまでの学費は免除になる、というのが正解です。
言い換えると一度審査に通れば卒業までの学費は免除ということです。
例外的なパターンがあるかもしれないので断言はできないのですが、奨学金を申し込もうとするともらえる奨学金の詳細がかかれた書類には、Available study modesのところにfull degreeって書いてあるんですよね。
なので、基本的に医学部では1年生で取得して奨学生になったら6年生まで免除になる認識で大丈夫です。
また、申請して落ちてしまった場合は毎年改めて申請することができますので、予備コースで取れなかったら1年生で、1年生で取れなかったら2年生でという感じで毎年チャンスはあります。
その場合、審査に通った学年から卒業までの給付になります。
ただし体感の話として、基本的には学年が上がるにつれ取得は難しくなるようなので、できるだけ予備コースや1年生での取得を目指したいところです。
実際に今年度(’24/25)は、日本人では予備コース生しか合格者が出なかったようです。
加えて、留年した場合は、奨学金の継続のための必要単位数があり、それを取ったうえで再履修するための学費が追加でかかる形みたいなので、注意が必要です。
ちなみに予備コースで申請する際は1年分(二学期合計)の成績が必要ですが、1年生以降は1学期の成績のみで評価されます。
奨学金の申請に必要なこと
奨学金の申請には以下の3つが必要です。
- 書類手続き
- 健康であること(健康診断が必要)
- 成績
奨学金の申請の流れとして、1月頃にエントリーの書類の締め切りがあり、その書類をもとにノミネート者が決まります。ノミネート後、こちらで病院巡りをしながら健康診断を受け書類を提出します。
その後大学側からの成績とともに評価され、夏ごろに合格者が決まります。
奨学金の合格基準は…?
奨学金の合格基準は、非公開のため完全に未知数です。
なのでこれ以降の話は自分が申請したときや先輩の話を聞いたりしたうえでの体感になります。
やはり努力量の分配としては成績を取るのが最重要、それとは別で一次審査としてのノミネートは成績が関係ないので、書類に不備がないか不足がないかは大事な前提となります。
必要書類について
英語力証明書
必要書類で代表的なものに、英語力証明書があります。こちらは英語力の証明として提出が必要です。
ハンガリー政府奨学金のサイトのセゲド大学医学部の欄には、
Minimun level of language proficiency (oral): B2
Minimun level of language proficiency (written): B2
と書かれているので原則CEFRのB2以上は必要になるとされています。
といっても、私もspekingはB1でしたし、総合B1で通ってる先輩もいらっしゃるのでB1は必要くらいの認識で大丈夫だと思います。
※CEFR(セファール)とは、外国語の習熟度や運用能力を測る国際標準のことです。
ただ多くの日本で一般的な高校に通っていた方の多くは英語力証明として、英検しかもっていないよ、という方も少なくないと思いますが、英検は日本の機関のものなので、国際基準のIELTSやTOEFLを受験する必要があります。
ですので、ハンガリー医学部に進学予定で奨学金受給を検討される方は余裕があれば日本でIELTSなどを受けてきてしまうのがいいと思います。
といいつつ、日本にいる間は遊びたかった私は、同期と一緒にハンガリーでIELTSを受けたので
こっちで受けることもできます。
ただ奨学金の書類の締め切りが1月頃なので、それまでに結果が届く日程で受験しなくてならないのが注意点です。それが間に合わず申請を諦めた同期もいたのでスケジュール管理も大事になります。
Motivation Letter(志望理由書)
英語力証明のほかに重要な書類のひとつがMotivation letter(志望理由書)です。
Motivation letterは、”なぜ奨学金を申請するのか、なぜ給付を受けたいのか、私に給付してくれたら~こういう活躍をしますよ!”とアピールする場です。
といっても構える必要はなく、予備コースや本コースに入学するときにも提出しているはずなので、それをたたき台にして、奨学金申請する際のサイトに書いてある指示(何について言及するべきか)に沿って書き換えるといいと思います。
Motivation letterも同様に、どれくらい読まれているのかわからないし合格にどれほど影響するかは未知数ではあるのですが、1年生時にエントリーしていた同期でノミネート段階で落とされてしまっていた子も少なくなく、時期的に成績が無関係のためMotivation letterが原因ではないかと話していました。
特に1年生以降は締め切りが試験期間と被るため気持ち的に成績に終われていて書類が雑になりがちなのかもしれません。
なのであまり雑に提出しないよう、求められている項目に沿っているかどうかは最低限抑えたいところです。
必要な成績について
ということで一番気になる必要な成績ですが…これが一番分からず毎年変動があります。
これ以後の記述は感覚的な基準の話のため最近のセゲド大学でのみ適応される認識でお読みください。
また自分が予備コースで取得したため、基本的に予備コースでの話となります。
まず予備コースでの申請では予備コース1年分の成績が必要になります。
そして予備コースでは基本的にオール5を目指す必要があります。
私の一つ上の先輩方のときには、1学期2学期の全科目合わせて「4」をとった回数が2回の人までしか合格していなかったとのことだったので、予期せずとってしまいかねない「4」のためにその枠を残しておいて基本的には5を確実に取りに行けるよう対策をしていました。
しかし蓋を開けてみると私たちの代では、「4」を8回取った人で合格していたので、基準に関しては、なおさらわからないというのが正直なところです。
そもそもの奨学金の枠の数の問題なのか、倍率の問題なのか、その学年全体の学力のレベルの問題なのか、考えられることはたくさんありますが何が真実かは全くわかりません。
学期中に奨学金を狙っているメンバーの中で、申請の際の成績評価の式?が出回っていて、ハンガリー語ラテン語や英語系などの先生によってムラのある授業の配点比重が低くなっていました。
が当時はなるべく余計な情報に振り回されたくなかった自分はそういう話をシャットアウトしていたので覚えていません…すみません。
ひとつ言えるとすれば、書類の不備なくオール5を取ることができれば、ほぼ確実に通るということです。
また、1年生以降は1学期の成績のみで評価されます。
1年生以降は明確にGPAの計算式があり、単位数の多い科目の比重が重くなります。
したがって、ハンガリー語やラテン語などの、必修ではあるが単位としてカウントされないものは反映されないようです。
1年生は予備コースの何倍も好成績を取るのが大変ですが、GPAが4以上あれば奨学金をとれる可能性が高いと言われています。
予備コースでの方が取りやすいと思う
これも個人的な感覚の話ではありますが…正直、私が1年生を終えた感想では”予備コースで4をとる努力”で1年生の「2」が確実にとれるくらいの難易度だと思っています。
1年生の試験の性質もありますが、まずは進級するために必須な「2」を確実に取る勉強をする、ここまでは努力が足りるか足りないかです。そのうえで評価が「3」なのか「4」なのか「5」なのかは運の要素が大きいです。
試験で選ばれるトピック運、先生運、先生の機嫌などでも変わってしまいます。全部まんべんなく勉強して挑んだはずの子が「3」で、特に手厚く勉強したところが運よく偶然聞かれた子が「5」とかが全然あり得ちゃうんです。
予備コースだったら、その二人は確実に4以上は取れます。それだけすべてを網羅する勉強をするのが大変、ということです。
1年という時間、予備コースの学費、あらゆるものを天秤にかけて何を取るかは人それぞれかと思います。
私は現時点では、予備コースがあったことで奨学金を取ることができて今後6年の学費が無料になったのなら捧げる価値のあった1年だったと思っています。
奨学金を取るための勉強法
奨学金を取るための勉強方法や、考え方について説明します。
アウトプットが大事
奨学金を取るための勉強についてですが、私自身が予備コースで取得しているので、1年生以降の勉強ではこの記述では足りないかもしれませんが、自分が意識していたことをお話しします。ご了承ください。
最重要なのはアウトプット中心の勉強をすることです。
ペーパーテストがほとんどなのですが、長文の筆記パートが少なくないので、何もヒントがない状態でも答えらえるようにする勉強が求められていたと思います。
読んで理解してわかったつもりになっていても、緊張する試験でほぼ白紙の用紙にきちんと自分の知識を書き出せなくては意味がないんです。
私の場合は、特に授業スライドを読むだけのインプットが飽きがちで苦手だったのもあり、化学や物理など演習できる問題が豊富に提供されている科目は、なんの知識もない状態でまずは問題を解くようにしていました。
何もわからないので当然解けないのですが、解けなくても、問題文の意味はわかるのか、それすらわからないのかをはっきりさせてから、スライドを使って必要な知識を調べていました。
その順序の方が試験対策として結果的に効率的だったかなと思います。
また生物や医療英語などの、まるごと流れを理解して覚える必要があるものは、読んで理解してまとめたら、それを穴埋め形式にしたものも作って、それを問題代わりに埋めて覚えていました。
まとめると言っても、まとめて満足するのはよくないし、目的はあくまで内容を覚えること自体なので、スライドですでにまとまっているものはそのまま使うようにしたり、ネットで調べて良い画像があればそのまま覚えていました。
一例として私のノートを載せておきますね笑
参考書から引用している画像は著作権の問題があるのでモザイク加工しております。
英語で勉強しなきゃダメだよね?
英語で勉強するの大変では?ということに関しても気になるところかと思いますが、
アウトプットさえ英語でできれば正直インプットは日本語依存でもなんとかなります。
私は予備コースでは英語ができるようになることよりも奨学金をとれることの方に重きを置いていたので、成績を取るために手段は選んでいられませんでした笑
なので、スライドでわからないところがあればすぐにGoogle翻訳にかけていましたし、項目名が分かるものはネットで日本語でまとまっているページを調べて理解の補助にしていました。
また予備コースの勉強内容は大学受験とかなり内容が被っているのもあり、自分の日本語での知識を生かしたかったのも、日本語依存で勉強していた理由の一つです。
特に化学や生物でもう十分理解はしている単元のものなどは、英単語がわからないだけなので、日本語⇆英語を変換できる単語帳を作ってそれで覚えていました。
逆に予備コースで新しく学ぶ内容は、日本語を経由する方がむしろ時間がかかるので英語中心で勉強していました。私は物理を選択していなかったので日本語で調べてもよくわからないことが多く、わからない部分は物理選択の友達に解説してもらっていました。
筆者からのアドバイス
ここまでお読みいただきありがとうございます。最後に私らーゆが個人的に大事だと思うこと、考え方についてお話します。
まず第一に、希望しているならとりあえず申請すること。
これは奨学金の合格基準が毎年度大きく変わる可能性があるからです。
自分でオール5には程遠いから無理だと決めつけたりせず、とりあえず最後まで諦めずに好成績を狙いにいくこと、ダメもとでも申請することが大事だと思います。
私の代は基準が緩かったので、ダメもとで出した子は通りましたし、反対に途中でやめちゃった子は若干後悔があったと思います。
次に本質的じゃない情報に振り回されないこと。
「過去問そのまんまでるらしい」だとか「~~先生のスライドじゃないと足りないらしい」だとかそういう情報が本当によく出回ります。
でもそんなの、過去問通りに出なきゃおしまいだし、まず自分の先生のスライドの内容全部アウトプットできるのか、足りないのが事実だとして試験に出たとしても言っても数問分、他が満点なら「5」は取れます。
そういった情報だけでなく周りの人に振り回されないのも大事です。
バックグラウンドは本当に人それぞれです。経歴的に同じように見える人でも、通っていた学校の環境やもともと持っている知識、自力での勉強に慣れているかどうか細かく違います。
”誰かがこう言ったから、こうした方がいいのかな”って迷ってしまうかも知れませんが、
実はできることもやるべきことも決まってます。
自分がやれるだけやってみてダメなら、そのときはそのとき。
そういう覚悟をもって勉強に挑んでいけば悔いなく過ごせると思います。
おわりに
相変わらずかなりの情報量となってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
ハンガリー政府奨学金とその実態について気になっている方のお力になれていれば幸いです。
ご質問やリクエストなどございましたらコメントにてお待ちしております。また今後大きく情報が変わることや、新年度に伴って得た情報があれば追記、もしくは別記事にて紹介したいと思っています。
長い文章をお読みいただきありがとうございました。
コメント