試験期間のことを思い出すのが怖くて先延ばして2年生が始まった頃にに8割書いて放置…。ほんっとうにお待たせしてごめんなさい!後編です笑
学期末試験(ESE)とは
学期末試験はEnd Semester Exam(ESE)と呼ばれる試験のことで、
学期が終わった後の試験期間に受験する試験です。
試験期間はおよそ1か月半~2か月で、試験も履修登録のように自分で日付を決めて受験します。
試験期間の最後の数日はRetake Exam periodと呼ばれており、受験するのが2回目か3回目のものしか受けることができません。
学期中の試験とは完全に別物で、学期の最終週に試験がある科目でも半分以上が試験期間に改めて試験があります。
学期末試験がある科目は、それそのものの成績が進級に関わります。
学期中の試験や出席状況は、学期末試験の受験資格を得るのに必要だったり、学期末試験の成績にボーナスポイントとして加算されたりします。
学期末試験での評定が各科目2以上であれば合格で、基本的には全科目終わり次第長期休みとなります。
※厳密にはリテイク期間はESEとは扱いが別ですが細かくなってしまうので図では割愛しています。
てかこの図、配色がパワポなのバレバレだな笑
システムについて
試験登録のルール
2か月弱の試験期間の中で、各科目試験が実施される日が公開されているので、
その中から自分で試験日程を選択して登録します。その際に下記のルールがあります。
- 各科目、一回の試験期間につき最大3回までしか受験することができません。
- 試験に落ちた場合、次の試験登録には落ちた当日から数えて3日以上空けなくてはいけません。
- 登録した試験は、試験開始の24時間前までなら変更可能です。
キャリー(試験の再履)について
不合格になってしまった試験のうち最大2科目まで次学期の試験期間に持ち越すことができる仕組みがあります。
我々は「試験をキャリーする(carry)」と呼んでいます。
ただしこれは1回でも試験に挑戦し不合格になった場合のみで、一度も受けないで持ち越すことはできません。
また科目によっては学年を跨いでキャリーすることができません。
たとえば1年生の科目だと二学期のPsychologyは2年生にキャリーすることができましたが、Anatomy2のような重要科目は基本的にキャリーできません。
これは私の体感ではありますが、1科目のキャリーは全然次の学期で取り返せるのですが、
2科目となると留年リスクが高いので要注意です。
一学期末の試験の時点でかなりピンチだったら、キャリー科目をひとつ決めてしまって中途半端に勉強するのをやめて、他の科目を確実にパスするほうが勝率高いと思います。
留年、退学について
留年は、必修科目の試験に2学期までに合格することができず、次の学年の科目に進めない場合に発生します。
また各試験、最大の試験受験回数が6回となっているので、たとえば一学期に3回受けてダメで二学期にキャリーして3回受けてダメだった場合、6回を超えてしまうので留年していなくても退学となります。
逆に言えば、キャリーするためには最低1回の受験が必要なので、一学期に1回しか受けず持ち越して二学期も1回しか受けず、留年して次の学年の一学期に1回しか受けず…とういうように最低回数で引き延ばすと、ひとつの試験につき最大3年留年ができます。
試験科目
必修科目についてだけ、試験形式や試験内容、実際にした対策などを具体的にご紹介します。私が討伐した順です笑
一学期 Fall semester
Cell Biology 細胞生物学(免除)
Cell Biologyは学期中に3回のMTOがあるのですが、最後のMTOで評定3以上を取れるとESEが免除になります。
※私たちの学年の場合で一つ上の先輩たちはMTO1での結果次第だったようなので、要確認です
ESEはペーパーかオーラル(口頭試問)を選ぶことができます。日本人だとオーラルを選ぶ人は多くないですが、英語が得意で雰囲気と勢いでいけるタイプの他の国の子たちはオーラルで受けていたりします。
MTO3とESE(ペーパー)は試験範囲と構成とが同じで、3,4ページで一組になっていて大体以下の構成になっています。
- 選択問題(4択10問)
- 記述問題(大問4つ分くらい)
- 定義を答える問題(10問)
一学期の講義で扱った範囲すべてなのでかなり量は多いです。各単元ごとに大事な「流れ」を理解してアウトプットできるようにしていくのがいいのかなと思います。
ただ一学期はかなり予備コースでやった範囲とも被るので、予備コースでの知識を入れなおしつつ新しい分野を抑えられれば戦えると思います。
私は個人的に12月に取ってしまった飛行機を変更できないFIXプランで取っていた&1月末に日本で当たったイベントがあって、なんとしてでも免除を取る必要に駆られていて。必死に免除を目指していました(笑)
ChemistryⅠ化学
一学期ではIntroduction to Medical ChemistryというChemistryの基礎も扱う科目も同様にESEがあります。
どちらもペーパーテストがあって、Introduction~はChemistryの基礎的な部分だけに絞った科目なので、Chemistryの勉強しておけば網羅できると思います。
軽めの計算問題、構造式、選択問題、反応式が聞かれます。
Chemistryの範囲も、予備コースとの被りが多いですが、後半は新しいことも多いので、せめてペーパーで解ける形に仕上げておくといいと思います。
二学期では一学期の範囲も含めてオーラルテストなので、ちゃんと勉強しておくに越したことはないです。
Physics 物理
ちょっと覚えてない…笑 記憶にないってことはそんなに大変じゃなかったんだと思います笑
試験形式はパソコン室で学校のサイトで受験する形です。電卓を持ち込むことができて、公式シートも配られます。
一学期のseminarの授業でやった計算や知識問題、隔週でサイト上で行われる小テストを問題集代わりに確認しておき、どの問題にどの公式を使うかだけを把握して乗り切った記憶です…笑
AnatomyⅠ 解剖学
一学期の最大の関門です…実は一学期に合格できないまま日本で冬休みを謳歌したので(おい)、二学期にキャリーしました。
試験形式はオーラルテスト(口頭試問)です。AnatomyパートとHistologyパートに分かれています。
試験範囲は3セクションそれぞれ約25個トピック(:トークテーマみたいな)合計75トピック与えられていました。
一学期の内容はUpper Limb上肢、Lower Limb下肢、Upper Trunk 胴体の上の方です。
Anatomyパートでは各セクションからひとつずつ合計3トピックと、Cross section(断面図)が一つがパソコンでランダムで選ばれます。
解剖学教室に紙とペンが用意されているので、まずは各トピックについて覚えてきたことを書きだします。
準備ができたら書きだしたことを元に先生に説明していきます。先生側から質問が入ったらそれにも答えます。
基本的には自分で順序立ててスピーチをする形式ですが、先生が優しいと質疑応答っぽく誘導してくれることもあります。
Cross sectionは、選ばれた部位に当たる画像を自分でファイルの中から探します。先生が指をさして「これは何?」と聞いて行ってくれるので答えていきます。
Histologyパートでは先生からスライドがひとつ渡されて顕微鏡で観察します。その組織の名前を答えて、そう判断できる理由を説明します。
トピックの具体例は二学期の方で詳しく紹介します!
二学期 Spring semseter
ここがおそらく日本の医学部との最大の違い。ハンガリーの医学部は試験範囲がオーバーラップするんです!
つまり二学期の試験は学年末試験、試験範囲が一年分になる科目があります。
Psychology 心理学
図書館のパソコンエリアでサイト上で行われました。前日に軽く講義のスライドを解読した程度で、正直ぜんぜん勉強していませんでしたが、
科目の性質上、常識で答えれる問題があったり自分が関心を持っていて少し知っていることが聞かれたりで、60%以上合格でギリギリ60%でした(汗)
意外と少人数クラスの授業で触れていた内容も出てきていたので、授業にちゃんと参加しとくと楽かもしれません。
試験時は18点/30点中が合格だったのですが、17点のひとが多かったみたいで、あとで点数調整が入って17点以上で合格になっていました。
他のメイン科目たちに忙殺されている学生の味方って感じでありがたかった…
Physics 物理
一学期同様、パソコン室での受験です。二学期は一学期と比較しても講義の内容が、“医療で使われる物理”といった感じで、それについて聞いてくる内容が多かった印象です。
個人的に私はPhysicsの日の朝にキャリーした分のAnatomyを入れていて余裕がなかったので、最小限の勉強で挑みました。
事前にサイトで試験問題の配点についての説明があって、計算問題の配点が低かったのと、配られる公式シートを使えばその場で何とかなる気がしたので、計算は対策するのをやめましたコスパ悪くて(笑)
その代わり、かなり知識系の問題が聞かれるようだったので、学期中のスライドのテーマになっているもの(MRIの仕組みなど)を、日本語でネットで調べて理解して常識力を底上げしたみたいな感じで挑みました(笑)
学期中の小テストのボーナスもあったので、なんだかんだ余裕をもって合格できました。物理は全体を通して、普段のテストをマメにやっておくと後々救われる印象です。
Cell Biology 細胞生物学
二学期は免除が取れずかなり苦戦しました。形式は一学期と同様です。
MTO3は評定3で免除、ESEは評定2で合格。言われてみると当たり前なのですが、試験内容はMTOよりも難しかったです。
試験範囲が同じでも、MTOではメジャーなテーマがたくさん扱われる一方、
ESEではマイナーめなテーマや少し踏み込んだことや細かいことも聞かれていたので、まんべんなく勉強する必要があったように感じます。
とは言っても、受験した中で、
「この流れをわかってないとダメなんだな」という重要項目みたいなものが分かってきて、
そこは忘れないようにちゃんとアウトプットできるようにしつつ、知識が薄いテーマのスライドを改めてしっかり読んでいく形で勉強しました。
生物はまず理解するのが大事だと思っているので、共有されているスライドやwordの文書を日本語にして日本語で理解して、英語で覚えるようにしていました。
AnatomyⅡ 解剖学
何を隠そう間違いなく1年生で一番きつい試験です。
試験範囲は一学期のAnatomy1の内容も含めて、全部で97トピックありました。
数自体はAnatomy1から20個ほどしか増えていないのですが、内容は倍になっているので、1トピックで聞かれていることの分量が増えています。
①試験形式
大まかには一学期と変わらずオーラルテスト(口頭試問)なのですが、私たちの年はEntranceテストというものが追加され、
それに合格できないと本試験(トピックについて答える)に進めない形式になっていました。
Entrance テストの試験範囲は、一年間のMTO(学期中のテスト)のEssential listとHistologyスライドになっていました。
以下に試験の流れを書いてみました。Entrance内、本試験内での順番は先生によって違うこともあります。
- ステップ1Entrance test(Anatomy)
先生がご検体や模型から10箇所選ぶ、その場所の名前を紙に書く。
10点満点中7点取れないとここで試験終了。泣。 - ステップ2Entrance test (Histology)
1年間でやったスライドの中から一つ選ばれ、顕微鏡で確認して部位の名前とそう判断できる理由を答える。それ以上の情報はここでは聞かれない。
スライドが判別できなかったり間違えたりするとここで試験終了。泣。 - ステップ3Anatomy part
3セクションから一つずつ選ばれたトピックについて紙に書いて準備したのち説明する。
3トピックそれぞれ成績がつけられる。ひとつでも1がつくと試験終了。 - ステップ4Histology part
形式はEntrance 同様。ここに加えてその組織の構造や働きを説明したり、顕微鏡で確認できる構造を指すように言われたりする。
- ステップ5Anatomy part (cross-section)
指定された断面図の紙を選び、主要な構造の名前を答える。
この成績とトピックごとの成績を総合して大体平均くらいでAnatomy partの成績がつく。
②トピックの具体例
Ⅲー7. Anatomy, Histology of the Stomach.(胃の解剖学的・組織学的特徴)
信じられます!?この曖昧さ(笑)勉強し始めたときはこの曖昧さに何を答えていいのか混乱していました。
例えばこのトピックだったら、
- 基本事項(簡単に場所、形、働きの概要)
- 4パートあるよ (胃はその部位で四分割できます)
- その他特徴的な構造を列挙
- 胃に血を送っている動脈と枝分かれを説明、それがどこに繋がっているのか。
- 静脈も同様
- どの神経が動かしているか
- パートごとに顕微鏡で見られる構造が違うのでその説明
- その細胞の働きの説明(胃酸)
くらいのことを答えられたらさすがに合格できると思います。
箇条書き一つにつき5つくらいは固有名詞を覚える必要があるようなイメージです。
中身を断片的に覚えるだけでなく、体系的に話せるように何を話すのかも把握する必要があるのがAnatomyの大変さです。
厳しい先生だと「これ分かってないとやばい、人殺しちゃうから」という禁忌的な基準があって、それを間違えたりするとその場で1(不合格)をつけられてしまうこともあります。
ひとつのトピックでこれくらいの分量が必要になるので、これが100弱はなかなかの量になるなのがおわかりいただけましたでしょうか?
ChemistryⅡ 化学
一学期とは打って変わって激重科目に大変身を遂げるのが化学です…舐めてるとここでつまずきます(体験談)
①試験形式
二学期の試験形式はオーラルテスト(口頭試問)。形式自体はほぼAnatomyと変わりません。
化学の試験範囲は、1セクション約15トピックが3セクションになっているので、試験会場に入るとアナログな紙のくじ引きで各セクション一枚ずつ選びます。
机にはトピックリストの一覧と、紙とペンが用意されているので、
トピックリストから自分が引いた番号を探して、それに沿って紙に覚えてきたことをまとめます。
一通りまとめ終わったら、1トピックずつ先生に説明していきます。
情報が足りなかったりすると「これはなぜ?」「これの反応式書ける?」と途中で聞かれたりもします。
すべて話終わると先生が踏み込んだ質問をしてきてそれにもちゃんと答えられると好成績がつきます。
②トピックの具体例
化学はAnatomyとは違って、具体的に細かく答えるべきことが列挙されていて、一問一答でもいいのでそれにすべて答えられれば合格はできるみたいです。
例えば、Oraganic chemistry 有機化学から
Hydroxycarboxylic acids and their chemical properties. Lactone formation. Important
representatives. Halogenated carboxylic acids. Oxo acids: chemical properties and important
representatives. “Ketone bodies”. Organic derivatives of carbonic acid and their importance.
長くなっちゃうので部分的に触れますが、
冒頭のHydroxycarboxylic acidsは、カルボキシ基とヒドロキシ基を両方持つ酸のことなので、代表的な5つの名前と構造を描けるようにする。といった感じです。
Anatomyで箇条書きにしたようなことは既に与えられている点では易しいですが、
本当に1年分、基本的なところから描くのが難しい高分子まで含まれるのでまるっと一科目勉強する必要があります。
範囲だけで言えば受験みたいです、応用問題はありませんが!
とはいえ、Anatomyのように医師としての根幹にかかわる科目ではないので、先生たちは優しいことが多いです。
ちゃんと勉強してきたことが伝わればいくつか答えられなくてもなんとかなります。
試験を振り返って
勉強不足な一年でした
舐めてました。医学生の自覚が足りませんでした。
というのも高校・浪人と散々積み重ねてきた勉強コンプレックスが嘘のように頑張れて成果が出てしまった昨年度。
完全なる驕りと油断です。
そのうえで、
予備コースのときの「奨学金絶対取る」といった、明確な目標が持てなかったんです。
受かりさえすればいいし、留年することはないっしょ。って。
なので本当に学期中の試験をその場その場で凌ぐだけで、試験期間のことをまったく想定できていませんでした。
舐めた姿勢で目標もない、全体的に意欲がないので自ずとそもそもの試験範囲の把握ができたのは試験期間になってからです。
でも実際、想像以上に留年とは隣り合わせで、私よりもずっと前から対策をしていた子でもなかなか本番で思うように発揮できずに3回目のラストチャンスになってしまったり…。
同期で留年した子も数名いますが、本当に明日は我が身と言いますか…
試験期間が後半に差し掛かると「間に合わないかも、そしたら留年だ」というプレッシャーは常に感じていたと思います。
せめてもう少し早く意識だけでも違ったら、もう少し余裕を持てていたんじゃないかな…とは思いますが、
時間を巻き戻しても同じことをすると思うので、必要な挫折であり経験だったんだと思います。
実は二学期のAnatomyとChemistryはどちらも3回目の留年すれすれの合格だったのですが、
その過程がなんとも怒涛というかドラマチックというかハラハラするというか…
我ながら衝撃の体験だったので記事にしています。
気になる方はこちらも合わせてお楽しみください。試験ドキュメンタリーです(笑)
一年生の試験、合格するには…?
とにかく、しんどいアウトプットから逃げないことです。
これだけははっきり言えます。学期中からマメに覚えて定着させていけるタイプはまた違うかも知れませんが…
アウトプットって慣れるまでは本当にきついんですよ。
時間かけて理解したと思ったものをいざ真っ白のノートに書きだしてみようとすると、
「さっきやったばかりのはずのに何にも出てこない…」それの繰り返しなので、本当に心が折れそうになります。
たとえばAnatomyで100近くのトピックがあるとなると、そう簡単に短期間で周回できないんです。
全部一気にやろうとしたら、95個目をやるころには~40番まですっかり忘れてるなんてこともザラです。
でも、試験本番はまったくヒントの無い状態でまっしろの紙に書くわけなので、その状態が再現できなければ戦えないんですよね。。、
なので15個ずつとかに区切って、
まず何もわからなくてもまっさらな紙に書けるだけ書いてみる
→まとまってるノートやテキストで答えを確認する
→もう一回まっさらな紙に書き出してみる
→覚えられないところの理解を深める、覚え方を考える
→もう一回まっさらな紙に書き出してみる
…ってやっていると覚えてくるんですよね。
2年生になった今思うこと
1年生の特に二学期の試験は、本当に情報量が多すぎて茫然自失…みたいな、無量空処くらったみたいによくなっていたのですが…
乗り越えた今は、
”どんなに量が多くても、結局一つ一つ向き合ってやっていくしかなくて、何度やっても覚えられなくて終わる気がしなくても、結局ちゃんと覚えるまでやるしかなくて、諦めずに取り組み続けたらちゃんと試験に合格できるんだ”、
と体で思えるようになった気がします。
なので、1年生よりも難しくてややこしくて量も何倍もありますが、「頑張ればできそう」と少しは思えています。
おわりに
ながーーーーーーい振り返り記事、最後までお読みいただいた方、ありがとうございます。
お疲れ様でした…。
なかなかブログを習慣にできていなくて、時間の空いた投稿になってしまいましたが、ギリギリ忘れる前にありったけの情報を詰め込んだつもりです!
ハンガリー医学部の1年生ってどんな感じなんだろう?本当に留年するの?と気になっていた方のお役に立てていれば幸いです。
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